猫の子の件

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ツタージャ

 ポケットモンスター。1996年の初代作から20年以上、いまや世界でも大人気の名作ゲームである。くわしくは知らなくても、アニメをちょっと観たことがあるとか、ピカチュウぐらいは知ってるという人が多いだろう。

 これまでに登場したモンスターは800種類を超え、デカい・ちっちゃい・カッコイイ・カワイイが一通り揃っている。プレイヤー達に「好きなポケモンは?」と聞けば、800択あるのだからさぞいろんな名前が返ってくるにちがいない。

 そう、たとえば「ツタージャ」とか。

 

ツタージャ(ポケモンオフィシャルサイト「ポケモンずかん」より)

 

 ずかんNo.495、くさへびポケモンのツタージャは、その名のとおり草でできた蛇のようなポケモン。まさに藪蛇といわんばかりの姿である。

 数学的な美とか隠れてそう(知らないけど)な流線型の輪郭に、みずみずしい生命力に満ちた鮮やかな緑色。首元の襟のような器官の黄色がアクセントになって、絵全体に締まりを与えている。

 小さくもきれいにまとまったその姿は、しなやかさの中に独立した「個」を感じさせるいでたち。かわいい

 今日はこのポケモンのマジ卍な魅力を、勢いだけで書きなぐろうと思う。

 

 

1.半目がかわいい!

 面食いなそこのあなたに向けて、まずは見た目の話から。何よりもやはり、あの半開きの大きな目がかわいい。

 ツタージャは、「イッシュ地方」というところから冒険に出るとき、最初のパートナー候補となるポケモンである。一番最初のポケモンなんだからかわいいおめめをしておけばいいものを、わざわざ生意気そうな視線をこちらに向けており、マスコット然とした小さな身体とのギャップがあざとい。

 本人(本蛇?)としては身体の構造上これ以上まぶたが開かないだけなのだが、こちらの感情をすべて見透かしたようなあの目つきで見つめられたら、私みたいな人間はもう興奮してしまう。各作品のパートナーポケモンの中でこんな目をしているのはツタージャぐらいで、これは彼の大きな特徴といえる。

 この目つきはツタージャの気質をよく表している。このポケモンの性格はゲーム中では「知能が高くとても冷静」とある程度だが、アニメ版ではませた一面やプライドの高さが強調され、「その賢さゆえに、トレーナーの能力によってはツタージャのほうから縁を切ることもある」という独自設定までつけられている。

 トレーナーのことを平気で値踏みしてくる、文字通り「トレーナーを選ぶ」ポケモン……こざかしい視線のイメージにはマッチしているが、そんなのを初心者のパートナーにしようとするイッシュ地方の人々はどうかしている

 

2.ちっちゃい手がかわいい!

 次に触れたいのは、体躯に比べて小さい両手である。「ブラック2」のポケモン図鑑によれば「手よりもツルをうまく使う」らしいので、これは生物的な進化と退化の中で自然と形成された大きさだと思われる。デザインの細部にまで理論が徹底しているということだろう(適当)。なお、ツルは黄色い襟の部分から出す。

 前述したような気高い意識を持った彼が、こんなちっちゃいおててで木の実なんか持ってポリポリ食ってる──そんな姿を想像すると、私みたいな人間はもう快感を覚えてしまう。あまり使わない器官ゆえに、うまく持てずに落っことしそうになったりするかもしれない。スカした半目ヤローのそんな一面を見てしまったら隠し撮りが止められず、iPhoneのカメラロールが一瞬で一杯になってしまうだろう。

 まあ普通にお得意のツルを使って食べるのかもしれないが、想像なのでなんでもありである。ツタージャに木の実を差し出したとき、手とツルのどっちで受け取るのか…できることなら試してみたい。

 そもそもモチーフが蛇であり、デザインとして積極的に手足を表現する必要性が高くないことが、このかわいらしい手を生み出したと考えられる。よって、これはまさに設定が生んだ奇跡のフォルムである(大げさ)。ツタージャが木の実食ってるイラスト、心当たりのある人がいたら教えてください。

 

3.しっぽがかわいい!

 さて、そんな小さな手とは対照的に、尾部には大きな葉っぱがついている。

  • これがあることでツタージャのちっこさがより引き立ち、ここまでに挙げた魅力がより強調されている
  • そしてこの葉っぱ自体も可愛い
  • つまりツタージャはすべてが可愛い

 これを三段論法という(証明終了)。これは光合成を行うための器官で、ここに太陽の光をたくさん浴びてエネルギーを得ることで、ツタージャの動きが鋭くなる。また、何らかの原因でツタージャが元気を無くすとこの葉はたれ下がり、不調であることが一目でわかる。

 つまり人間からすれば、このしっぽはそのままツタージャの心身のバロメータになるわけで、実際にパートナーとして付き合っていくうえでこれほどわかりやすい指標はない。少なくとも人間よりずっと楽である。こういった実際の飼育(?)のしやすさという面でもツタージャには大きな魅力があるのだ。こいつは現実にはいないから関係ないだろって?うるさいな

 

 ここまで、容姿の観点から「おめめ」「おてて」「しっぽ」がかわいいことを示してきた。総じて、このポケモンはデザイン・設定・機能性が見事にマッチしており、非常に完成度が高いことがわかる。

 

4.戦い方がシブい!

 ビジュアル面はこのへんにして、ここからはこのポケモンのバトル能力に注目しよう。ポケモントレーナーは「目と目があったらポケモン勝負」と言い放つほど好戦的な連中であり、「ポケモン」と「バトル」は切っても切れない関係にあるからだ。

 最初のパートナー、いわば「準主人公」としてプレイヤーと長く苦楽を共にするツタージャ(とその進化形)だが、彼が得意とする戦い方は、全国の子どもたちが夢見る「主人公の一番の相棒として、目の前の相手をガンガンぶっ飛ばす」イメージとはややそぐわない。

 攻撃力より防御力のほうが高い「守備寄り」のステータスを持ち、使えるわざも攻撃系より、相手を弱らせたり味方をサポートするもののほうが充実している。アタッカーになるより、その耐久力と持ち前の素早さで「戦いの場を整える」役目を負ったときに、ツタージャ(とその進化形)は最も力を発揮する。各作品のパートナーポケモンの中で、こういうタイプはやや珍しい。

 搦め手など考えず攻撃だけしていれば十分クリアできるストーリー攻略では、他の仲間の攻撃能力に押され、最初のポケモンなのにパーティの隅に追いやられてしまうケースもあるようだ。

 サトシのピカチュウとは大きく違う戦闘スタイル。定式化されたヒーロー観に一石を投じるその生き様がシブい

 

5.とくせいがすごい!

 ポケモンにはわざやステータスとは別に「とくせい」という特殊能力があり、特定の条件で効果を発揮してバトルや冒険に影響を与える。「せいでんき」のとくせいを持つピカチュウは戦闘中触れてきた相手を麻痺状態にすることがあり、「いかく」を持つアーボックは場に出たとき相手を威圧して攻撃力を下げることができる。

 ツタージャのとくせいの中には「あまのじゃく」といういかにもな名前のものがあって、これには「戦闘中の能力上下を逆転させる」効果がある。たとえば、今挙げた「いかく」持ちを相手にした場合、威圧されているにも関わらず攻撃力が上昇する。相手からすればそれこそ藪をつついて蛇を出す事態である。

 生意気でプライドの高いツタージャが、敵の威嚇に対してつい子供のように強がってしまう──そんな姿を目の当たりにしたら、私みたいな人間はもうこねくり回したくなってしまう。戦闘面でも妄想面でも実用性の高いとくせいといえる。

 さらにこのとくせいは、大したことないはずのツタージャの攻撃能力すら目覚めさせる。「リーフストーム」というわざ(葉っぱの嵐で大ダメージを与えるが、反動で使用者のパワーが大きく下がる技。葉っぱごときで大ダメージなのだから相当な暴風である)とあまのじゃくが組み合わさると、本来下がるはずのパワーが上がるため、使うたびにどんどん攻撃力を高めることができてしまうからだ。

 このことからは、「補助にも攻めにも適性がある」というなかなかない特長が見えてくる。プライドの高さは伊達ではないようだ。

 

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 このとおりツタージャには、デザイン面でもゲーム面でも強い個性が与えられており、その徹底ぶりには開発陣の気合いの入れようが窺える。はじめから人気を狙って生み出したに違いない。こんな記事を書いてる奴はまんまと手のひらで踊らされている。

 以上、このポケモンの魅力について書き手の性癖を交えながら書いてみたが、いかがだっただろうか。ポケモンをよく知らない人にもなんとなくわかるよう意識したつもりだが、本当に勢いだけでやってしまったので多少の読みづらさはご容赦願いたい。

 もちろん、今回伝えきれなかった魅力もまだまだあるだろう。それはこれを読んだあなた自身が、自由に見つけ出してほしい。

 もし次を書く機会があるとしたら、「がまんポケモン」などという常人の発想とは思えない概念を持つポケモン「ソーナンス」についてお話しできたらと思う。